ねこのめ

ねこのめみたいにくるくる回る日常の出来事

「受けた恩は忘れない」

リンドノードは、高さや早さや危険さなどの
「過激(エクストリーム)な要素」を持ったスポーツの
総称であるエクストリームスポーツの選手である。



彼が、野良犬アーサーと出会ったのは
エクアドルの荒野でピーク・パフォーマンスのメンバーとともに
690キロの過酷なアドベンチャーレースの世界選手権に挑んでいる最中だった。


リンドノードと3人のメンバーたちは、アンデス山脈で短い休息を取っていた。
そこへ現れたのが、飢えて痩せ細った1匹の野良犬、アーサーである。



リンドノードによると、その犬は餓死寸前だったそうだ。



このやせ細った犬はアンデス山脈の農村を村から村へとさまよっていた。



リンドノードは自分のミートボールをこの犬に分け与えた。





たまたま分け与えたミートボール。

それがすべてだった。

それで十分だった。

飢え死に寸前だった野良犬のアーサーはこれがたまらなくうれしかったのだろう。
リンドノードとそのチームと共に運命を一緒にすることを決めたようだ。



チームがペースをあげても、アーサーはピタリと後ろについてくる。

アーサーはチームが行くところならどこにでも付いてきた。
川を渡り、泥の中を進み、山を登り、そうして自然にチームの一員となっていったのだ。



寒いときは、リンドノードは自分の上着をアーサーにかけてやった。



眠るときも常に一緒だ。



リンドノードたちが挑んでいたレースの内容は、
海水面4570メートル上での、ラフティング、ハイキング、ランニングと、
とても過酷なものだった。弱った体ながら、レースに加わったアーサーは、
厳しい道中をメンバーと共に進んでいった。



そしてついに、レース最後の種目である、約11キロのラフティングまでたどり着いた。

もうすぐゴールだ。ところがそこで、大会の審査員から犬は連れて行けないと告げられてしまう。



せっかくここまで一緒に来たのに・・・
アーサーを置いていくことに無念を感じるチーム。

胸が詰まるような思いでラフティングに乗り込んだ。

「さよならアーサー、元気でやれよ!」 

そんな気持ちで後ろを振り返ると、なんと、アーサーが水の中を懸命に泳いでついてこようとしているのだ。
この姿を見たチームはもう、アーサーを置き去りにすることなんてできなかった。



チームは、アーサーの元へ引き戻りボートに乗せた。アーサーを連れて行くことにしたのだ。



アーサーは、野生で生きていく中で多くの傷をおっていた。
 そしてさらに、今回のレースに参加したことで更なる傷を負った。



運命的な出会いを感じたリンドノードはアーサーを家に連れて帰ることに決めた。



レース終了後、チームはすぐに獣医のもとにアーサーをつれていった。

健康状態をチェックし、傷を治し、アーサーは元気を回復していった。



すべての手続きも終わり、アーサーは無事に11月20日スウェーデンに到着した。



そこでアーサーは、再び苦楽を共にしたチームメイトにあうことができたのだ。



多くのメディアがアーサーに注目し、アーサーは一躍有名犬となった。



リンドノードのチームは無事ゴールを果たした。

12番でゴールした彼らは、この競技初の5人チームとなっていた。

「僕たちは優勝カップをもらうためにレースに参加した。
 だが優勝カップよりももっと貴重なものを得ることができた。
 それは5人目のチームとなったアーサーである。 
 アーサーは優勝以上のものを、もっと大切なものをチームに分け与えてくれた」と
 リンドノードはそう語った。

アーサーの存在によりチームは励まされ、過酷なレースを最後まで進むことができたのだ。