ねこのめ

ねこのめみたいにくるくる回る日常の出来事

【・ᴥ・】犬と子供の不思議でかわいい話



15/04/06
小学生だった時の話。

たしか二年生か三年生くらいの時だったと思います。

いつもは近所の子と一緒に登校するんですがその日はお休みで
私一人で家を出て、途中で違う地区の子達と合流して登校する予定でした。

凄く田舎なので極力一人登校しないようにっていう決まりだったんです。

だからいつもより早めに家を出て
歩いて十分くらいの合流地点まで向かう途中でした。

犬の軍団に会ったんです。
軍団って行っても5匹なんですが、小学生の中でも特に小柄な私から見ると
すごい迫力だったのを覚えてます。

一瞬ビクッとなったんですが、良く見たらその中の一匹が
秋田犬っぽい見た目だったんですよね。

その頃の私は漫画に目覚めたばかりでした。

それも、両親の漫画好きの影響で本棚にあった
ろくでなしブルース』とか『修羅の門』とか『銀河鉄道999』とか。

その中でも銀牙(ぎんが)の完全版が本当に好きで
何回も何回も読み直すほどでした。

だからビクッとしたのも一瞬で、すぐに

「銀だ!じゃあっちのはベン!?あっちはクロス!?紅桜(べにざくら)は!?私の好きな紅桜は!?」

って興奮MAXになっちゃったんです。

今思えば危険でした。

なに考えてたんだろう私。


そんで話しかけたんです。秋田犬に向かって、「銀?」って。
そうしたら首を横に振ったんです。

その辺からもうおかしいんですけど、当時の私は違うのか…って少し残念になって。

でも五匹の犬はなんていうかこう…ボーリングのピンみたいに
秋田犬を筆頭にして三角形みたいに並んだままジッとしてるので
調子に乗って話しかけてました。

「熊と戦ったことある?」

とか、

「熊は死んだふりするから、倒したと思ってもすぐ近付いちゃダメなんだよ!」

とか。漫画のほうでリキがやられたところがショックすぎたんでしょうね。

もの凄い勢いで言い聞かせてたのを覚えてます。

それでも五匹の犬はジッとしてて、秋田犬だけが首をふったり
かしげたり、うなずいたりしてくれてました。

中でも一番印象に残ってるのは、

「絶・天狼抜刀牙(ぜつ・てんろうばっとうが)って知ってる?」

って聞いたときです。
しゃべったんですよね。

「なんだそれは」

って。でもその時は特に不思議に思うこともなく
その秋田犬とずっと会話を続けてました。

「知らないの?必殺技でね、こう…回転を利用して」

みたいに一生懸命説明するんですが、

「回転?おまわりか。私はそんなことはしない」

とか言われて、そうじゃなくてジャンプしてから縦に回転するんだと説明すると

「そんなことできるわけないだろう」

と一蹴(いっしゅう)されて、私はなぜか熱くなってしまい

「そうやってあきらめてたらなにも出来ないよ!」

「紅桜も最後まであきらめなかったよ!」

とか、なぜか私の大好きな紅桜を、松岡修三並みに熱く語っていました。
それでも秋田犬は私の話を聞いてくれて

「すごいな紅桜は」

「すごい技だな」

「でも熊とは戦わないから大丈夫」

「熊と戦ったりしたら死んでしまう」

みたいなことを言われ、たぶんもの凄い時間しゃべってたと思います。



そうしたらそのうちにハッと我に返って
「やばい!はやく行かないと怒られる!」って思って立ち上がりました
(犬と目線を合わせるためにしゃがんでしゃべってました)

そうしたら秋田犬が、

「あんまり走ると転ぶぞ。にわとりが出るからな」

って言って、正直なところ言っている意味が全く分からなかったんですが
とりあえず返事をして、犬達に手を振って私は走りました。

あとはありきたりなんですが、走り出してすぐに
一回振り向いた時にはもういなかったです。

どっかに走ってっちゃったんだと思って
やっぱり犬は早いなぁと思いつつ合流地点に向かいました。

本当なら約束の十五分前くらいにつく予定だったのに
十分以上遅れて行ったので凄く怒られました。


ちなみに合流してからみんなで鬼ごっこしながら学校に向かったのですが
私が逃げる番だったので全速力で走っていたら
なぜか側溝からにわとりが飛び出してきて、ビックリしておもいきり転びました。

あー、このことだったんだなーと冷静だった自分のこととか、もの凄くよく覚えてます。


ちなみにこのときの体験を「おかしくね?」と思い始めたのは小学校6年生くらいのときでした。
それまでどうして犬としゃべった時の事を普通のことだと思っていたのかよく分かりません。

友達の家の犬とかに話しかけたりすることもなかったので
犬が喋れないのは分かっていたんですが

なんだかあの秋田犬だけは
しゃべってる様子が当たり前のように思えていたというか。
今でもよくわからない体験です。

でも銀牙は今でも大好きなので、出来ればもう一回会いたいです。
銀牙を知らない人にとっては意味不明な体験談ですみませんでした。