声を発することのできないヒロインが
言葉を話さないクリーチャーに出会って愛するようになる。
彼女はその理由を手話でこう表現する。
「彼はわたしのことを、何か欠けたところのある不完全な存在としては見ない。
彼はただ、あるがままのわたしを見る」
このヒロインが若くなく、目を見張るほどの美貌でもなく
その愛に性的行為も含まれているところが、従来のおとぎ話のヒロインとは違う。
この愛の強さを際立たせるのが、アメリカとソ連の冷戦下という時代背景だ。
2つの大国という巨大な存在が権力闘争をする時代の中で
愛が、当時の社会的立場の弱い人々の間に伝わっていく。
ヒロイン・イライザ(サリー・ホーキンス)も、言葉を話せず
政府の極秘研究所で深夜清掃員をする存在。
そして、そんな彼女に協力するのが、同僚の黒人女性(オクタヴィア・スペンサー)と
アパートの隣人で同性愛を隠している失業中の初老男性(リチャード・ジェンキンス)
そして祖国ソ連に諜報活動を強要されるがその命令に反して
自分の意思を貫こうとする生物学者(マイケル・スタールバーグ)なのだ。
そして、この愛のロマンチックさを増幅させているのが、モノクロのミュージカル映画の数々。
ヒロインとアパートの隣人男性はいつもテレビで昔のモノクロのミュージカル映画を観ていて
2人でソファに座ってダンスの足だけ真似したりする。
この習慣があるので、ヒロインがクリーチャーに自分の思いを伝えようとするとき
スクリーン上に素晴らしい魔法が起きる。
本作はこうした誰もが胸を打たれる愛の物語なのだが、それでありながら
実はいつものギレルモ・デル・トロ監督映画でもある。
この監督はクリーチャーが大好き。
だから『ブレイド2』(2002)でも『デビルズ・バックボーン』(2004)でも
『ヘルボーイ』(2004)シリーズでも、もちろん『パンズ・ラビリンス』(2007)でも
いつもクリーチャーはどこか愛らしい。
そして、クリーチャーは純粋で、怪物は人間なのだ。
そして、もうひとつ素晴らしいのは、本作のタイトルだろう。
直訳すると“水の形”。監督自身も語っているが、この水とは愛のこと。
水も愛も、それを取り巻く状況が変われば、それに合わせて姿を変える。
だから、どこにでも、どんな形でも存在することができる。
このタイトルが、物語のすべてを語っている。
ヒュージャックマン主演のグレイテストショーマンも観たいな(*^.^*)